2009/01/06

それでも新自由主義。

一斉に新自由主義反対の狼煙が上がっている。
しかし、では社会主義的な政策を行っていたら、現在の危機は起こっていなかったか、と考えると、酷く心もとない。(というか財政が耐え切れるかというあたりが。。。)
むしろ、「改革を進めてこなかったからだ」とか「旧態依然の体質がいけない」とか言われるのが落ちではないだろうか。
メディア含めて新自由主義改革を声高に叫んだ小泉時代が単なるブームだったと批判しているように、現在の新自由主義改革批判も危機が去れば単なるブームだった、なんてこともあるかもしれない。
経済は好景気不景気必ずあるのだから(今回の経済危機は「100年に1度」でそのレベルに収まらないとも言われているけれど、)目の前の現実にのみ合わせて時々の言説に流れるのでなく、長期的な視点も必要と思うのだが。

この問題、新自由主義が良いのか悪いのか、勉強不足もあって、うまく自分の考えをまとめられていないのだが、取り敢えずメモしておく。

今のところの、私の立場としては、
新自由主義的な改革は方向性としてはやはり必要であるが、具体的な個別の政策についてはその負の側面を補うことが必要で、慎重な検討を要する。
経済政策としての新自由主義的な改革と、現在の行政の無駄・矛盾の改革が、両方とも「小さな政府」という言葉で進められてきたが、これは分けて考えるべきだ。(例えば郵政民営化は、民営化という自由主義的改革の側面と、一連の道路公団を初めとした諸々の特殊法人等への財源としての財政投融資の改革という側面がある。)
というもの。

例えば、昨今、喧しい雇用の問題。
小泉改革時代の派遣労働の製造業までの拡大は間違いであった、派遣切りをする大企業は許せない、という論調になっているけれど、では、当時派遣労働の製造業の解禁をしていなければ、現在の雇用問題は発生していなかったのだろうか。むしろ、派遣、正社員の別なく、リストラが吹き荒れただけだと思うのだが。
しかも、日本の場合、法律よりも判例上という説も有るが、正社員の解雇は相当難しい。よって、派遣という雇用形態がなかったら、失われた10年を潜り抜けたばかりの日本で、企業は雇用を極力増やそうとせず、2000年以降の失業率の低下はなかった可能性もあるのではないか。
今後、厳しい経済情勢を背景にリストラは正社員にも及ぶことになるだろうが、経済的な危機を体感した企業は、解雇が厳しければ厳しいほど、ますます次の雇用に慎重になるだろう。
そもそも、「経済情勢が厳しくなれば解雇するのが当たり前だ」という捉え方がおかしい、という批判はあろうし、解雇しないことを前提に話ができればそれは素晴らしいが、実際そうしないと企業自体が潰れてしまっては更に悪いスパイラルに陥るのではないか。
高度成長期のような、「一社懸命」終身雇用を前提とした社会が成り立たなくなっている以上、寧ろ、正社員も含めて解雇を容易にし、労働市場の流動性を高めるべきだ、という言説の方が現実的な気がする。
他方で、小泉改革当時も必要が叫ばれていたセーフティネットの整備は十分だったか、というと明らかに十分でなかった。現在の派遣切りが問題になっているのは、同時に進めるべきであった、流動性を高めた労働市場の結果として生まれる齟齬や失敗に対応するだけの制度を構築できていなかったことに有ろう。
思うに、派遣労働の解禁は方向性としては、労働市場の流動性を高める意味で間違いではなかったが、程度が中途半端で、かつ同時に進めるべきセーフティーネットの整備を怠ったという意味で至らなないものだった。
つまり、新自由主義的な改革それ自体が間違っていたのではなく、同時に行わなければならなかった、補完的意味での「再チャレンジできる社会」の構築に失敗した、ということではないだろうか。

それから、政府の無駄・矛盾について。
最近の新自由主義の反発、修正は(私としては上記の通りのそれほどうまくはいかないのでは、と懐疑的だが)うまくいくのであれば、それに越したことはないと思う。ただ、心配なのはそうした言説が、政府の無駄・矛盾の具体的には無駄な規制や非効率の温存に使われてしまいそうなことだ。
例えば、郵政民営化についても、財政投融資の財源として特殊法人等へ流れていたお金の元を断つ、という改革の側面があった。それが新自由主義的、つまり民営化という手段と親和的であった、ということだが、仮に、民営化しなかったとしても、それらの非効率は改革する必要があり、他の手段での改革はいずれにせよ必要であったろう。そこで、新自由主義がイケナイ、となれば、そうした改革が進まなくなる恐れがある。
つまり、行政の無駄の解消は、新自由主義の改革を手段として進めやすかったが、他の手段で行うにせよ必ずやらねばならず、新自由主義が反対されることで、改革自体が忘れ去られてはならない、と思う。
あと、昨今の建築基準法、金融商品取引法に代表されるようなコンプライアンス不況を引き起こすような無駄な規制もそうだろう。今度の、薬のネット販売規制も、ドラッグストアでなら(確かに「対面」はするけど)一言も交わさずとも買える商品が買えなくなる、ってやっぱり不自然だよね。

取り敢えず、こんなところで。

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