2009/11/12

倍音とは何か(補足、蛇足、具体例)。

先のエントリーに加えて、具体例とトリビアルな話をいくつか。


様々な楽器の音色の違い、そして須らく音質は、その含む倍音のバランスによって決まる。
一般的にいって、倍音がないと味気なく、バランスが悪いと心地悪い響きになり、倍音が多いほど豊か丸くに聞こえるようだ。
(ちと、音をどう表現するか言葉が難しいのだけれど、取りあえず、イメージとしては。)
例えば、トランペットを始めとした金管楽器は、最もバランスよく全ての倍音が含まれている(らしい)。
(バランスが良く、と言うのは、全ての倍音が含まれていて、基音から離れる倍音ほど音量が減衰する、という意味。)
他方で、オーボエを始めとしたダブルリードの楽器は一定の倍数の倍音がすっかり欠落している(らしい)。
このため、管楽器は丸みを帯びた音、リード楽器は鋭い印象の音色を持っている(らしい)。
ただ、オーボエの音が好きだ、と言う人がいることからも明らかな通り、音色に関して、別段、倍音が多ければ多いほど良いというわけではない。
何を「いい音」とするかは、最終的には個人の好みの問題なので。
オーボエを始めとするダブルリード楽器がソロ楽器なのは、一定の倍音の欠落による鋭い音の印象から、目立つ音になりやすいため、また管楽器が重厚な和音やハーモニーを作るのに使われるのは、倍音の含み方のバランスがよく、和音を作るときに響きを深くしやすいから、といえるだろう。
いずれにせよ、音色の違い、楽器の特性はこの倍音の含み具合、どの倍数の倍音が強いとか弱いとか、全体のバランスの差によって生まれているのだ。

細かい構造は知らないのだけれど、管楽器が同じポジション(例えば、トランペットで言えば開放=バルブを何も押していない状態)で鳴らせる音は、綺麗にこの倍音の順(ド→ド→ソ→ド→ミ→シ♭・・・※トランペットの場合、調が違います(ド=B♭)がここでは便宜的に)になっている。
一説によるとサックス等、木管楽器でも、相当困難であるが、同じポジション(運指)で、倍音にあたる他の音を出せるらしい。

倍音を豊かに含む音を集めて作るハーモニーについて、面白い現象が知られている。
例えば楽器や歌声で「ド・ミ・ソ」を同時に鳴らして、それが豊かな倍音を含んでおり、綺麗に共鳴すれ(振幅が重なれ)ば、出していないはずの高音がクリアに聞こえてくる、なんてことが起こる(らしい)。
つまり、それぞれが共通して含んでいた倍音が相乗効果で可聴レベルまで強化されるということらしい。
この現象、かつては「天使の声」等と呼ばれていたらしい。

この倍音の含み具合、人間の声質にも当てはまる。
これについて、先のエントリーで書いた小室さんの本の中で面白い記述があったで、幾つか、メモしておく。
・歌手は「声質」が全て。
歌手を夢見る人たちも、・・・最初の段階で「×」なら、もういくら努力しても無理だ。次の段階へは進めない。音楽の勉強や歌唱トレーニングをすると、音痴はある程度解消できる。それなりのリズム感も身につく。しかし、声質だけはどうしようもない。
仕事柄、過去に何万人という歌手志望の人の歌を聴いてきた。
オーデションの審査員席にも何百回と座った。いつも基準は同じだ。
聴くのは声質。「そこだけ」といってもいいくらい集中する。(第五章 p200-202より)
(これ、歌手目指している人には結構ショックな事実ですよね。)
・プロのミュージシャンの録音の手法で、同じ声、同じ音程を二回重ねることにより、倍音成分を強調する、「ダブル」と呼ばれる手法がある、ビートルズも使っていたくらい常套手段。TM時代、宇都宮隆の声を重ね撮りし、聞いていたところ、他の誰かがハモリを歌ったのではないか、と思われるくらい、明確に聞こえたという(まさに上述の「天使の声」でしょう)。それほど宇都宮さんの声に豊かな倍音が含まれていたという話。
・小室さんが音楽的声質の持ち主として触れている人;宇都宮隆、宇多田ヒカル、KEIKO、美輪明宏、美空ひばり、松田聖子、姜尚中
・ハスキーボイスは独特の倍音構成を持つ声の一つ。一般的な声より複雑な倍音構成で、1オクターブ上の音が強く出ている場合が多い、或いは特定の倍音だけが削られ、特定の倍音だけが残る。例として、森進一、八代亜紀、ロッド・スチュワート等。
・歌手の理想的な声質がある一方で、逆の声もある。例えば、別に性格も悪くもない、話の内容もつまらないわけではない、なのに、何故か話しているとイラっとする。その人の声には響きを濁らせる倍音成分が多いかもしれない。
それぐらい、声質は大事なのだ。
関心があれば、この本を是非ご一読を。


また、更に、蛇足ながら、昨今、CDの販売減少が著しい中で、アニメのキャラソンが健闘しているわけですが、
勿論、ネット等に流れたCD全体の減少に比して購買層が違う、というのは大きな一因ではありますが、
俳優に容姿端麗な方が多いのと同様、声優というのは、言ってみれば声質に関しての超美男美女なわけで、
そもそも、人にとって心地よいと感じられる「声色」を持っている、ということも一因な気がします。
アニソンに関わらずですが、こんなに歌唱力ないのに、なんで売れてるの?というアーティストで、その声質が要因になってることって結構あるのではないでしょうか。

どーでも、いいですが、
最近ステレオポニーの「ツキアカリのミチシルベ」がヘビーにローテしてます。
あの声を裏返すぎりぎりのあたりの響きが最高です。

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