2008/12/15

08憲章―中国の行方

中国の「08憲章」のニュース、驚きました。例えば、
中国、一党独裁変更署名1269人に ネットが仲介、庶民や少数民族へ拡大
とか。
中国でこれほどの運動が起こるとは・・・。
大雑把な内容については、これまた産経ですが、
に載っていましたが、
気になって全文を探してみたところ、こちらのブログにありました。訳と掲載、深謝。


さて、この08憲章、一言で言ってしまえば、「先進国並みの民主国家になりましょう。」ということでしょう。
第二次世界大戦後、ある国の民主化過程において、所謂「開発独裁」のように独裁体制によって、経済的な開発を効率的に(強権的に?)推し進め、しかし、経済的な成長が続く中で中間層の厚みが増し、政治的意識の拡大を通して、その独裁体制が倒れ民主化する、という経緯をたどる国が結構ある。
韓国やインドネシア、フィリピン等、東南アジアの国々がこうしたカテゴリーに入れられる事が多いが、いずれにせよ、経済成長を維持することで独裁の正当性を確保していたが、経済成長の停滞や指導層の腐敗が、政治意識を有する中間層の民主化運動への契機となる事が多い。
(勿論、シンガポールのように、開発独裁体制が功を奏し続けている国もあり、しかも、個別の国の事例は種々様々だし、人口や資源の賦存量等にも関わるので、一概にまとめることは出来ないし、必ずしも民主化を絶対視する発展観が正しいは言えないとも思うが。)

このアナロジーで言えば、この08年憲章は、まさに中国において、経済成長によって膨らんだ中間層を代表するような知識層によって、共産党による支配の正統性に否を突きつけるものであり、民主化への移行の段階への到達を予感させる。
もともと中国の様々な暴動等は報道で接してきていたが、少数民族の抑圧への反発であったり、農地の強制徴収への反発であったりと、単なる不満の爆発が多く、民意の形成にはまだまだ程遠いとの印象をもっていた。
また、天安門事件のような一部民主化勢力の運動というものは散発的に発生するものの、それが大衆にまでは広がらない=政府の権力基盤が強固であり独裁による利益が大きく正当性が担保されていたということでしょう。
今回は暴動という形ではなく、しかも民主化の具体的なビジョンの表明という点が大事で、今後、単なる暴動を起こしてきたような「不満」に対しどう解決策を提示し、人々を巻き込めるかというところがポイントでしょう。
他方、それが出来なければ、また一部民主勢力が騒いだだけ、で終わってしまう可能性がある。

個人的には、色んな意味で、ちょっとまだ早いかなぁ、という印象を持っている、あくまで印象ですが。
中国の場合、人口が多すぎて、格差が大きいため、都市部の先進的な部分に目がいきがちであるが、農村部の中間層という意味でまだまだ経済的な発展が足りない気がする。
他方で、この経済危機が一つの契機になる可能性もある。
中国で雇用を維持するには7~8%(統計による、確か中国の公式には8%)の経済成長が必要であるといわれているが、来年にはこれを下回るでしょう
とすれば、経済の停滞、社会不安の増加し、共産党の正当性は大きな疑問符がつく。

今後、最大の注目点は、中国政府がこれに対してどう対応するか、ということでしょう。
完全に弾圧を行い続けるのか、一部可能な範囲で提言を受け入れて漸進的な改革を進めるのか、全面的に提言を受け入れてラディカルに改革をする方向へ舵を切るか。
一部民間人が勝手に提言してるだけなので、華麗にスルー、てなわけにはいかんでしょうから。
とはいえ、公式な対応はなんら発表せず、一部首謀者は国家転覆煽動罪とかで逮捕し、他方で一部受け入れ可能な部分の改革は行い、スルー、ってのがありそうなシナリオですが。
しかし、署名者が1000人、2000人の知識人とすると、それだけじゃ、お茶を濁せなくなるかもしれませんね。
共産党中央部が、一番現状に危惧を抱いているだろうし、報道を読む限り、執行部は党内の腐敗、それ以上の地方政府の汚職と中央への面従腹背に手を焼いているようだから。

まぁ、いずれにせよ、この提言、理念、言ってる事は至極まともかつ立派だとは思うのですが、実際の制度設計の段階では相当な困難を伴うでしょうね。

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