2008/12/12

モスクワといえば、・・・渋滞。

過日、交通工学(というんでしょうか?都市工学かな?)の専門の方とお話をさせていただく機会がありまして、触発されてモスクワの交通事情について一筆。

モスクワの道路交通事情、端的に表現するなら、"最低"、です。
取り敢えず、渋滞の悪名は世界に名高い、と言えるレベルではないでしょうか。
ぐぐってみたところ、2年前のエントリーで既にこれ程の写真を載せているブログがありました。
朝、夕のピーク時では、もう最悪ですが、それ以外の時間も都心部は酷く、モスクワでの車での移動は本当に時間が見えない。
郊外の空港へ向かう場合、数多くの悲劇も生まれているようで。

この渋滞の原因、まず、第一は急速な経済成長に伴う自動車自体の数の急速な増加がある。
90年代末の経済危機以降、プーチン政権時代は二桁に近い経済成長率を維持しており、これに伴いロシアにおける自動車販売台数もここ数年の間、確か年率30%~50%のオーダーで増加し、2007年で250万台程度になっている。
2008年、特に下半期は、8月のグルジア紛争、続いて金融危機を受け、急速に市況は悪化しているようだが、9月ですら、販売台数は前年同月比20%を超えで増加を続けている
(仄聞したところだと、蛇足ながら景気悪化とルーブルの急速な下落で、売れ筋車種は輸入車から国産車にシフトしているらしい。)

他方で、ストックにあたる、全自動車保有台数は全ロシアで3100万台程度、人口が1億4000万超なので、4人~5人に一台の割合になる。
モスクワに限っての台数は分からないが、モスクワ人口約1100万人で単純に比率で算すれば250万台、ただ、中央地方の所得格差の拡大を踏まえると首都の方が購買力が高いと考えられ、実際はこれ以上だと思われる。
因みに、比較として、日本国内の2007年自動車販売台数(登録車+軽自動車)は530万台、自動車保有台数は7600万台
東京都の人口は約1200万人で、東京都内の自動車保有台数は400万台、面積はモスクワの凡そ倍程度(モスクワは区内ぐらいの広さのイメージ)。
国土全体からすれば比較にならないものの、首都に限れば人口密度ならぬ「自動車密度」はモスクワの方がより高いと言えるだろう。
(東京の場合、近郊からの通勤通学で昼間人口が著しく増加するし、また区内に限定すればより状況は酷くなるだろうが。)

次に第二の原因として、道路の側のインフラが整っていない事が挙げられよう。
上述の通り、車の台数自体もさるものながら、問題は増加が急激に起こっていることであり、インフラ整備が追いついていない。
その専門の方が仰っていたのだが、道路の延べ面積自体が(東京に比して)非常に狭いらしい。
要するに、街の面積に対する自動車密度が狭い上に、道路面積に対すると更に狭くなるということだ。

その上、基本的に、駐車場というものが存在していない
その方曰く、「基本は路上駐車OKであり、例外的に禁止される」規則となっており、日本とは基本と例外が逆の関係にある。
しかも、車の購入にあたって、日本での様な車庫証明は必要ない
実際、私の住む目の前の道路は夜は路肩に車が鈴なりになる。
さらに、一般的に言って、立体駐車場といった設備もない(郊外のショッピングモールと空港ぐらい)。
従って、日常的に路上駐車が当たり前であり、路上に車が溢れているのである。
日本で高い駐車料金には不満を抱いたものだが、モスクワで駐車場がない、社会的コストを目の当たりにするに納得するところでもある。

また、インフラといえば、どうも道路のネットワークが非常にお粗末な感じがする。
これは私の印象なので、うまく表現できないのだが、どうも、車の流れをどう作るか、という道路の計画の発想の根本がおかしい気がする。
東京の場合、一般道とバイパス道、高速道路という役割分担があり、バランスをとってうまく機能しているのだが、モスクワの場合、バイパス道だが、高速道路のように車両に特化しているわけではないレベルの道路が、主流を占めている。しかも、時に片側5車線といった広さで。
遠距離を行く場合はよいのだが、近距離の移動が多い都心部だと、こう広い道路ばかりだと交差点や分岐・合流といったボトルネックとなる部分で、流れが悪くなるっているような気がする。
しかも、日本で言うところ「高速で降りるところ間違えた」みたいな状況が多発する。
恐らく、ソビエト時代、それほど車がない時代、の街造りのせいであろう。
嘘か本当か知らないが現在の数車線有するような道路は一昔前には、かならず遊歩道や緑地があり、街の発展にあわしてそれらが潰されて道路にされてきたとか、こないとか。

第三点として、交通事故とそれに伴う交通法の不備であろう。
ロシアでは、交通事故を起こした場合、警察が来るまで、事故車を一切動かしてはいけない、という事になっているそうのだが、この現状保全義務が、激しい渋滞を巻き起こしている。
これ、具体的にはロシア連邦道路交通法(ПДД : Правила Дорожного Движения Поссийской Федерации)によって定められている、と上述の方から伺ったので、調べてみた。
該当箇所を以下引用。
(以下引用サイト、運転の教習サイトみたいなのだが、結局、何処のサイトか、オフィシャルなものなのか良く分かりませんでしたが。)

ПДД РФ: 2. Общие обязанности водителей

2.5. При дорожно-транспортном происшествии водитель, причастный к нему,
обязан:
немедленно остановить (не трогать с места) транспортное средство, включить аварийную световую сигнализацию и выставить знак аварийной остановки в соответствии с требованиями пункта 7.2 Правил, не перемещать предметы, имеющие отношение к происшествию;
(в ред. Постановления Правительства РФ от 24.01.2001 N 67)принять возможные меры для оказания доврачебной медицинской помощи пострадавшим, вызвать "Скорую медицинскую помощь", а в экстренных случаях отправить пострадавших на попутном, а если это невозможно, доставить на своем транспортном средстве в ближайшее лечебное учреждение, сообщить свою фамилию, регистрационный знак транспортного средства (с предъявлением документа, удостоверяющего личность, или водительского удостоверения и регистрационного документа на транспортное средство) и возвратиться к месту происшествия;
освободить проезжую часть, если движение других транспортных средств невозможно.
При необходимости освобождения проезжей части или доставки пострадавших на своем транспортном средстве в лечебное учреждение предварительно зафиксировать в присутствии свидетелей положение транспортного средства, следы и предметы, относящиеся к происшествию, и принять все возможные меры к их сохранению и организации объезда места происшествия;
сообщить о случившемся в милицию, записать фамилии и адреса очевидцев и ожидать прибытия сотрудников милиции.

2.6. Если в результате дорожно-транспортного происшествия нет пострадавших, водители при взаимном согласии в оценке обстоятельств случившегося могут,
предварительно составив схему происшествия и подписав ее, прибыть на ближайший пост дорожно-патрульной службы (ДПС) или в орган милиции для оформления происшествия.(в ред. Постановления Правительства РФ от 21.04.2000 N 370)

(仮訳)
ロシア連邦道路交通法 2章 運転者の一般的義務
2.5 道路交通事故にあたって、事故に関係する運転手は:
直ちに(その場所から動かさずに)車両等を停止させ、ハザード・ランプを点灯し、条項7.2の規則に従って非常用(事故)停止表示板を立て、事故に関係を有する物を動かしてはならず;
(ロシア政府連邦政令 24.01.2001 N67 より)負傷者への応急医療処置のために可能な手段をとり、「緊急医療救助」を呼ぶまたは非常の場合には通りがかりの、これが不可能な場合には自らの車両に負傷者を乗せ最寄の治療施設へ運び自らの名前と車両登録情報を(個人を証明する書類、又は免許証及び車両の登録証の提示をもって)伝え、事故の現場に戻り、;
もし他の車両の通行が不可能な場合、通行可能な部分を空けねばならない。
通行可能な部分を空ける、または負傷者を自らの車両をもって治療施設へ運ぶ場合、予め証言者の立会いのもと車両の状況、事故に関する痕跡や物品を記録・固定し、それらを保存するため及び事故現場を迂回させるために可能なあらゆる措置をとり;
警察へ起こった事を報告し、目撃者の氏名、住所を記録し、警察職員の到着を待つ。

2.6.もし交通事故の結果、負傷者がいないとき、運転手は相互の出来事の状況評価について合意のもと、事前に事故の概略をまとめ、それにサインしたうえで、最寄の道路パトロール課、または事故手続きのための警察の部局を訪れることができる。(ロシア連邦政令 21.04.2000 N 370より)

一部例外として動かして良い場合もあるんですね、知らなかった。
いずれにせよ、実態上、この法規のおかげで、事故車は道路のど真ん中に陣取り、その他の通行を阻害しつつ、衆目を集めたまま、警察を待つことになる。


因みに、事故件数自体について、
モスクワ市のHPから2007年の交通事故の件数(棒グラフ)、負傷者数(折れ線緑)、死亡者数(折れ線赤)を引用する。



2007年合計で事故件数14929件死亡者数が1153人
日本で、警視庁の管轄内の2007年年間事故件数が68603件、死亡者数が269なので、
件数自体は多くないものの、死亡者数自体は4倍以上。
当然ながら自動車の性能等も一因ではあろうが、死亡者数と事故数の比があまりに大きいと、(また皮膚感覚的にも)モスクワの事故件数はもっと多い(または事故自体の定義が違うのか)と思ってしまう。
いずれにせよ、これだけの死亡者を出すような大きな事故が頻発し、警察の検証が済むまで、現状維持、となっては、交通事故とこの法規が渋滞要因の一つとは考えられるだろう。

さらに、第4点目を挙げるとするのであれば、よく言われることだが、習慣や国民性の問題は大きいように思われる。
例えば、客観的データではないのだが、体感で言って、日本に比べて運転が雑、明らかに急発進急停止が多いし、車線変更や追い越しも無理やり、と行った具合。
一般に渋滞下においても当然に車線が守られた方が結果的に流れが良いのだが、車線自体が明示されてないことも多いし、車が入り乱れて、車線がぐちゃぐちゃになっていることもしばしばである

これらを原因にモスクワの酷い渋滞は起こっているのであるが、交通情報のこのページ、リアルタイムでモスクワの渋滞状況を把握でき、非常に便利なのだが、モスクワ時間の朝、夕に見ると、渋滞の赤、混雑の黄色で、すごいことになっている。

さて、この渋滞、どうやったら解消するのでしょうか。
確かに、危機を受けて自動車販売台数の増加率は落ちてきていますが、それでも日米と違って伸びているし、少なくとも、放置しては悪化を続けるだけだろうし、それどころか、あと5年、10年で、モスクワの交通は完全に麻痺する、なんて予測も見かける。
これに対して、政府も2010~2015年で、5兆ルーブル(17兆円?)規模でモスクワの交通に取り組む、って話もありましたが。

現在、第三環状線の外側にもう一つ環状線を造っているそうですが、こうしたインフラは整備は喫緊でしょう、それも、日本の高速道路のように道路専用で高架ないし地下で都心を貫くような線が必要ではないでしょうか。
さらに、路上駐車対策、地下や高架の駐車場の整備、それから車線を明確に分けるといった道路自体の整備も勿論である。

あとは、ロンドンのように、公共交通を充実させる代わりに、税負担を増やす等、車両に制限をかけていくのも一つの手かもしれない。
まぁ、既に地下鉄も人で溢れているし、若者の車離れが進む日本とは違って、未だに車は"ステータス"なので、反発もあり、難しいでしょうが。

んー、考えても、やっぱ、これといって名案はないですね。
取り敢えず、こんなところでしょうか。

注:
ロシアについての各種データで出典のないものは、どっかで読んだか見たかしたもの。
まぁ、大枠ははずしてないと思われますが、正しくもないかも。
日本関連のデータは以下のサイトから。
警視庁の統計
自動車検査登録協会

ついでに参考までにリンク。
モスクワ市政府
правительство москвы
ロシア内務省 政府道路交通安全監視局(?)
ГИБДД МВД России

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

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